Omiya Park Life

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by 大宮戦術談議会

データによる2019シーズン総括 本編

omiyadangikai.hatenablog.com

どうも、Zdenko。 

導入編では今シーズン大宮アルディージャがどのような攻撃を展開していたかをFootball LABのデータを使って見てみました。この本編では私がハイライト動画を元に作成した得失点分析により集計したデータを使って、今シーズンの得失点に焦点を当てて、具体的にどのようなパターンにより得点あるいは失点していたかを振り返っていきたい(考察はほとんどしません)と思います。なお、手集計しているため、曖昧な部分があるので、大体そんな数字になるだろう程度のデータです。いやいや、それをそう分類するのはおかしい!と思うかもしれませんが、ご容赦ください。

なお、得失点はポゼッション、トランジション(カウンター)、セットプレーの3つに分類。ポゼッションとトランジションの区別としては、攻撃を開始してから相手に奪われることなくゴールに至った場合をポゼッション。相手が保持していたボールを奪ってゴールまで至った場合、ルーズボールや相手のクリアを拾ってゴールまで至った場合をトランジションに分類しています。
 
 
導入編まとめ
①セットプレー、中央攻撃、ショートカウンターによる攻撃が多い
②攻撃回数は少ないものの、速攻により高い割合でチャンスを作っている
ショートカウンターはリーグでも屈指のクオリティ
④引かれたときの攻撃は大きな課題だった

 

 

 

1.得失点分析から見る2019シーズン 攻撃の概観

(1)得点種別のシーズン推移

こちらの図は勝ち点、ポゼッションによる得点、トランジションによる得点、セットプレーによる得点の推移を表したものです。今シーズンはどのように得点源が変わっていったでしょうか。
1~16節はポゼッションとセットプレーがほとんどを占めており、トランジションがごくわずかです。今シーズンからキャプテンに就任した大前をチームの中心に据えたかったのは間違いありません。このため、彼にマッチしたポゼッション、セットプレーによる攻撃を志向したためであるからかと思われます。
チームの方針が変わったのは17節京都戦です。この試合からシーズン終盤まで、大前に代わって奥抜が起用されることが多くなり、チームは徐々にトランジションの割合を高めていくこととなります。一方で、大前というキックの優れた選手を控えに回したことは、セットプレーの停滞を生みました。
しかし、25節からファンマに変わりシモビッチがスタメンとなると、トランジションが停滞し、再びポゼッションとセットプレーによる得点が増えました
そして、32節からイッペイが左WBから右WBに回るようになると、ファンマがスタメンに復帰したこともあってか、トランジションが著しく上昇しています。
 
今度は得点種別ごとに整理してみましょう。簡単にまとめると以下のとおりになります。
 
得点種別のまとめ
①ポゼッション
・シーズンを通して安定して得点源になっている
 
・16~26節、33~39節での上昇が著しい
・ファンマ、奥抜、イッペイの出場が影響
 
③セットプレー
・1~12節で上昇、13~25節で停滞、26節以降で再び上昇
・大前、イッペイの出場が影響

 

(2)得点パターンの分析

(1)で得点種別がシーズンを通してどのように推移していったか大まかに把握できたと思います。それでは、各得点種別が具体的にどのようなパターンを持っていたのか、詳しく見ていきましょう。
 

①ポゼッションによる得点パターン

 
上図はポゼッションによる得点をパターン分けしたもの。合計で25あるうち、プレスを剥がしてのゴールが8つ、続いてロングボールをレイオフポストプレー)して奪ったゴールが6つでした。
 
プレス剥がしについては12節山口戦の2点、22節鹿児島戦の2点目と3点目、28節千葉戦の2点目などのように大宮が上手かったというよりも相手のプレスに難があったために得点できたゴールが多いです。ただ、相手のプレスどうこうは抜きにして、12節山口戦の2点目は見事でした。
 
プレス剥がし
 
また、ロングボール→レイオフのゴールですが、相手の間延びしているブロックに対してロングボールを放り込んでるケースが多いです。
 
ロングボール→レイオフ
 
増えてほしかったのが、ブロックのライン間やDH脇を使った攻撃で、こちらはわずかに2点。ただ、いずれの得点も見事な崩しでした。
 
ブロックのライン間やDH脇を使った攻撃①
 
ブロックのライン間やDH脇を使った攻撃②
 
 

トランジションによる得点パターン

 
トランジションによるゴールは19。ロングカウンターが5つ、サイドでの追い込みでボール奪取したパターンが5、中央での縦パスを奪取しての得点が4つでした。
 
ロングカウンターからのゴールは相手が前がかりになっている場面が多く、かつサイドから崩すことが多いのが特徴です。
 
ロングカウンター
 
サイドへの追い込みに関してはこれといって共通しているものはありませんが、チームとしてプレスをして奪ったパターンが2つと少ないのがやや残念です。
 
サイドへの追い込み
 
また、中央での縦パス奪取からのゴールですが、こちらはうち3つが奪取後にドリブルで運んでのゴールになっています。また、いずれのゴールも前からプレッシャーをかけ、ボールの出しどころを塞いでおいて、縦パスを奪っており、再現性を感じます。
 
中央縦パス奪取
 

③セットプレーによる得点パターン

そしてセットプレーでは18点取っているわけですが、その半分がコーナーキックによるもの。キッカーはイッペイが5、大前が3、奥井が1。しかし、FKはいずれも大前によるもので、コンスタントに出場していた15節までに6つのゴールに関与しています。また、スコアラーとして触れるべきは少ない出場機会にも関わらず3ゴールを挙げたシモビッチ、盾で殴った酒井、河本、畑尾あたりでしょうか。欲を言えば、シモビッチにはもっと点を取って欲しかったです。
 
大前の直接FK
 
 

2.得失点分析から見る2019シーズン 守備の概観

 

(1)失点種別のシーズン推移

一方で、こちらは勝ち点と失点の推移を示した図です。パッと目に付くのはポゼッションによる失点の多さです。と言っても、シーズンを通して失点し続けていたわけではなく、20節以降に急激な上昇を見せています。これは前から積極的にプレスを行うようになったことが原因です。
 

(2)失点パターンの分析

①ポゼッションによる失点パターン

上図はポゼッションによる失点を5つに分類したものです。左が1~19節。右が20節以降です。プレスに関係するデータとしてはプレス剥がし、ラインの裏や前線をシンプルに狙った攻撃のふたつです。プレス剥がしは言わずもがなプレスしようとして失敗したことによる失点。また、ラインの裏や前線をシンプルに狙った攻撃は7つある失点の内、実に5つがプレス陣形を取っていたところにロングボールや縦パスを入れられたことにより失点をしています。20節までの5失点はこの2種類による失点はなく、20節以降の23試合でふたつを合わせて11失点しています。これはシーズン通してだと52%、20節以降だと実に68%を占めることになります。攻撃面で改善が見られた一方で、当然ながらリスクもあり、実際に失点につながっていました。
しかし、一方で大外レーンからのクロスによる失点やその他(いずれも押し込まれての失点)はシーズンを通してもわずかに5点。これは間違いなく誇るべき数字でしょう。大宮DFラインのゴール前の守備のクオリティを示すものです。
 
 
プレス剥がし
 
ラインの裏や前線をシンプルに狙った攻撃
 
 
 

トランジションによる失点パターン

また、トランジションではサイドに追い込まれてボールロストして失点するパターンが6点、54%を占めます。このうち5つが右サイドでのボールロストでした。またほとんどがチームとしてプレスされたことにより失点してますが、ボールを奪われた選手が同じであるわけでもなく、奪われたエリアもまちまちで確信をもってあれだこれだ言えませんが、もしかすると、ボールロストしたシチュエーションというよりもボールロスト後の対応に左サイドと右サイドで差があったのかもしれません。
対象の失点を以下にリンクを貼り付けておくので、皆さんも考察してみてください。
 
第2節琉球戦1失点目
 
 第15節柏戦1失点目
(動画には映っていないが左サイドハーフウェイライン付近でスローインからボールロスト)
 
第18節岐阜戦1失点目
 
第23節京都戦2失点目
 
第29節愛媛戦3失点目(近藤選手のミドル&押し込み)
 
第31節町田戦1失点目
 

③セットプレーによる失点

また、セットプレーについては上図のとおりの内訳。驚嘆すべきはコーナーキックからの失点が3という少なさです。そのうち2つがサインプレー。残る一つが29節愛媛戦での山瀬にニアで決められたゴールです。つまり、普通のコーナーキックではほぼ失点を許していません。シーズンを通して43試合戦ってのこの結果は驚異的な数字です。また、PKやFK(直接)の少なさも評価できます。言い換えれば、危険なエリアでファウルをしていないということです。
 
29節愛媛戦 山瀬のゴール
 
 
以上、長々と読んでくださってありがとうございました。はじめにも書きましたが本記事は具体的にどのような得失点のパターンを持っていたかにフォーカスしたため、考察はほとんどしませんでした(これをどう考察すればいいのかという難題があったこともあって)。また、導入編にて書いたこととの関係性にも、各得失点種別同士の関係性(例:ポゼッションによるこの得点パターンは、トランジションによるこのパターンにつながりやすい)にも触れることはありませんでした。気力が出るか分かりませんが、後日、本記事をベースとした考察記事を作成したいとは考えています。私が無理ならきっとちくきくんが見事に考察してくれるでしょう。
 
最後に宣伝。本記事にて使用した得失点分析用のフォーマットですが、ご連絡いただければ提供可能です。ただ、他の人に共有する前提で作っていないので、数式が変だったり、分類方法の定義もあいまいです。それでも欲しいという方がいれば私までDMを下さい。活用してもらい、フィードバックをもらえればこの上なく喜ばしいです。
 
それではサッカーを愛してやまない皆さん、良いお年を。