Omiya Park Life

Omiya Park Life

by 大宮戦術談議会

【レビュー?】2021年J2リーグ第2節 vsヴァンフォーレ甲府

大宮0-2甲府

得点:新井(甲府)、野澤(甲府

 メンバー

f:id:Omiyadangikai:20210306224716p:plain

f:id:Omiyadangikai:20210306224855p:plain

Football LABから引用

開幕戦を逆転勝利した大宮。ホーム開幕戦の相手は甲府。直近4試合で一度も勝てていない苦手な相手である。

 

メンバーに目を向けてみると、水戸戦の後半のメンバーがベース。両SHには奥抜と黒川、2トップにはハスキッチと中野が選ばれている。

 

前半

水戸戦と同様に両SHを高い位置に上げ、更にタッチラインギリギリまで張らせることで424のような形で攻撃をする大宮アルディージャ。恐らく、相手がある程度前に出てきてくれる場合の1stプランは424の攻撃なのだろう。

 

恐らく狙いとしては2つ。1つ目は高い位置に立つ前線4人へのロングフィードで相手のDFの裏を一気に取ってしまうこと。ボールの出し手はCBの2人とGKの上田。上田が開幕2戦連続でスタメン出場しているのは、ロングフィードの質の部分があるのだと思う。

大宮の編成を見ていると、SHに素早い選手が多いのはここを狙っているのかもしれない。

 2つ目は裏を狙う両SHとFWの1人を囮にしてもう1人のFWが相手の中盤にあるスペースでボールを受けていくこと。

ラインブレイク(裏抜け)が得意な中野と裏抜け&ポストワークの両方が得意なハスキッチの2トップはこの狙いに最適だと言える。

 

2つの狙いを達成するためには相手陣地に大きなスペースを作り出す必要がある。

そのために最終ラインの4人とボランチは比較的低い位置取りをする。恐らく相手のプレッシングを誘発することで、相手陣地に大きなスペースを作り出そうとしているのだろう。

 

ロングフィードなどでFWやSHにボールが入ると、素早くボランチやSBがフォローに入り、大外・ハーフレーンへと侵入してクロスを狙っていた。
SHがタッチラインギリギリまで張るポジショニングをすることでSH~CBの相互作用は効きにくくなるため、容易にハーフレーンを攻略できるという設計なのだと思われる。
攻略するためにサイドの高い位置でボールを持った時に後方の選手は状況に応じてインナーラップとオーバーラップを使い分ける設計がされているのは水戸戦の2得点を見れば明白だろう。

 

omiyadangikai.hatenablog.com

 

前半の攻撃で特徴的だったのは、514のようなビルドアップ隊の立ち位置とハスキッチだった。

424の形で甲府がプレッシングをしかけないような状況では、サリー(ボランチ落とし)をして514のような形を作り出していた。通常、サリーを行うと両SBが高い位置を取って両SHが内側に絞ってIHのような仕事(3142化)をするようなことが多いが、水戸戦・甲府戦と続けて最終ラインの5人が相手のプレッシング隊の前にポジショニングをしていた。恐らく、これによって甲府のプレッシング隊を誘いこむだけでなく、ハスキッチへのパスコースを開通させる意味合いがあったのだと思う。

中盤を空洞化させるとハスキッチが主に甲府ボランチ脇のエリアに降りてきてビルドアップ隊からのボールを受ける。すると、両SHやボランチ、SBの選手が素早くフォローに入り、そのままスピーディな攻撃へと展開していった。

 ※ここでは黒川選手が降りたエリアを中の選手が利用

 

 

一方で、相手のプレッシングがCBにまで到達するような際(相手のプレーの矢印が前に向かっている際)には中野とともに相手のCBの裏のスペースへのランニングをねらっていた。

 

中盤の空洞化や広くピッチを使うSHをシンプルに使うような戦術を見ていると、大宮の攻撃方法はコンテ式の亜種(?)なのかもしれないと思ったりした。知らんけど。

 

一方で試合を通じて問題だったのは守備だった。

問題なのは2点。SHのプレスバック、そしてCFのプレスと後方の連動性だった。

甲府の右サイドは非保持でシャドーである泉澤選手がワイドに開き、WBの役割を担う荒木選手がSBやIHのような動きを繰り返すことで馬渡選手のポジショニングを難しくしていた(荒木選手につくの?泉澤選手をみる?泉澤選手は放置する?)。

荒木選手のポジショニングがIHとSBの位置を取ることで甲府は4123と3421の合いのこのような状況を作り出していた。シティの偽SBみたいなイメージだったのかもしれぬ。

これにより、大宮の1stディフェンスの基準が難しくなり、容易にボールを前進されてしまった。

また、簡単にサイドチェンジを許すことで2ボランチとSBが動かされてしまい、①CB~SBの相互作用が切れる②ボランチが動かされてバイタルエリアが空くという2つの問題が生まれてしまった。
昨年までの541ならば、プレスバックが遅くてもWB+CB+ボランチの3人で最小限の守備の連係を築くことが出来たが、今季はCBがPA内から動きにくいのでSHが低い位置までプレスバックすることでSB+SH+ボランチ+αで守備を行わないといけない。

両SHがプレスバックをサボることで、馬渡選手と泉澤選手の1vs1の形が生まれたり、バイタルエリアに人が置けなくなることでミドルシュートやペナ角からのクロスなどを簡単に許してしまっていたのだと思う。

 

後半

HTでハスキッチ選手→柴山選手の交代。甲府が先制したことで甲府がプレスラインを下げると予想したのだろう。
従って、前半のようにプレーエリアを確保できなくなると予想し、ランニング役として奥抜選手を前線にあげつつ狭いエリアでも仕事が出来る柴山選手を起用したと予想される。

案の定、甲府がプレスラインを下げたことで必殺のロングフィードを使えなくなった大宮は攻撃の形を変更する。

ボランチの1人をCBの脇に下ろした3142、あるいはCBの間や脇に上田選手を上げて3242のような形でボールの前進を試みる。これにより、SHの選手は内側に絞ってIHを役割を、SBの選手はWBのような役割を担うこととなった。(ときおりSBが最終ラインに残ったり、ボランチの1人がIH役を担ってSHがWB役を担う時間もあった)

狙いとしてはボランチ2人+CB2人+上田選手の5人でボールを左右に動かしつつ、甲府の左右のスライドが遅れたタイミングでIH役の柴山選手と黒川選手、あるいはWB役の馬渡選手と渡部選手にボールを送り込み、WB+IH+アンカー+FWの4人の関係性でサイドを攻略していくということだったのだと思う。最終的に狙うエリアはもちろん釣り出される甲府のSBの裏とCBの裏のスペースだった。

後半途中に山越・石川・矢島の3人を投入する。前半よりも薄くなる最終ラインのネガトラの質の担保のために山越選手と石川選手を投入し、更にSBのWB化とSHのIH化の形を明確にさせようとする狙いだったのだろう。

中野選手→矢島選手の交代は、ロングフィードによるラインブレイクを繰り返せるような状況ではなくなったことから、よりPA内で強さを発揮できる矢島選手に仕事をしてもらいたいということだったのだろう。

試合終盤には翁長選手も登場。WBの仕事をするSBの2人について、渡部選手よりもサイドでより推進力の出せる翁長選手を起用するという意味合いだったのだと思う。

 

想定外(ある意味想定内)だったのはやはり左CBの利き足問題であった。甲府の左右のスライドが間に合わない状況でも、山越選手の利き足が右足であることで、スムーズに同サイドのWB役やIH役へと送ることが出来ていないことが多かった。

結果的に大宮の攻撃は右サイドでは素早く攻撃できていたものの、左サイドでは窮屈な時間帯が非常に多かったように思えた。

(選手特性の問題なので、決して櫛引選手や山越選手が悪い訳ではない)

 

解決策としてはボランチの位置に左利きの選手を置いて左CBの脇に降りてもらうこと、左CBにそもそも左利きの選手を置くこと、上田選手が左CBの脇にまで出てくることになると思う。

左CBの選手は負傷中(河面選手は練習復帰?)、小島選手はベンチ外となると、3242でビルドアップするような試合状況では上田選手が左CBの脇にまで高頻度で現れるようになるかもしれない。

 

雑感

  • 攻撃の設計については1stプラン、2ndプラン共に一定の形が見える一方で、最終ラインの負傷者問題に悩まされている可能性がある。
  • 守備については深刻な問題が発生中。とりわけ、両SHは高い運動量が求められるのは承知の上でプレスバックをしてもらわないと失点を重ねてしまう。
  • 2トップが相手のプレーエリアを制限できないこと、2トップのプレッシング開始に後ろが付いてこれないことは密接に関わっている。ここも早急に対策が必要。
  • 上田選手は岩瀬監督の志向する現状の攻撃には必須級。GKが上田選手から変わったら、攻撃にも何か変化が起きるかもしれない。

 

この試合のインタビューで大切なことを選手も監督も話していたので、今後見返すことになるかもしれぬ。

 

終わり!