第11回さいたまシティカップ:vsナシオナルモンテビデオ プレビュー
高木政権2年目の大宮アルディージャは”さいたまシティカップ”でウルグアイリーグの強豪「Club Nacional de Football(通称:ナシオナル)」と対戦します。
ナシオナルは昨シーズンのウルグアイリーグ王者であり、南米のCLであるコパリベルタドーレスでも16強にまで進出しています。
先日行われたウルグアイスーパーカップ(日本で言うところのゼロックス杯)ではリベルプール相手に延長戦までもつれ込んで惜しくも2-4で敗北しているものの、アルゼンチンの強豪リーベルプレートとの親善試合では4-4で引き分けており、実力は折り紙付きです。
来日メンバー
先日行われたスーパーカップの登録メンバーの7割ほどが来日することになっています。
今回の来日メンバーは下部組織の選手と主力組の混成軍となります。
ウルグアイリーグは2月15日に開幕予定のため、ナシオナルにとってこの試合がリーグ戦開幕前の最後の調整試合です。
そのため、高いモチベーションでNACK5スタジアム大宮へと乗り込んでくるでしょう。
ナシオナルの特徴
✓4-4-2と4-3-3を使い分ける
✓非常に高いプレー強度(スピードや強さ)
✓パワーとスピードを活かしたカウンターは脅威
✓前方向に対するプレーは得意だが、背後のスペースの管理は苦手
ナシオナルは4-4-2と4-3-3のフォーメーションを使い分けますが、共通するのは非常に高いプレー強度にあります。高いプレー強度はナシオナルの生命線でしょう。
相手の最終ライン(DF)まで前線の選手(FW)がボールを奪いに行こうとする素振りを見せるが、中盤(MF)や最終ラインが連動しないことが多いため、FW~MFの間には大きなスペースが生じやすいです。
また、前方にいる選手にアタックした後のプレスバック(元の位置に戻る動き)も徹底されていないことからボランチや最終ラインの選手がアタックした選手がいたスペースを埋めるために前後左右に動くことが多く、相手チームが利用できるスペースは多く存在しているように思えます。
つまるところ、前への守備は得意ですが背後に広がるスペースの管理は苦手であると言えます。
442を採用してきたときは非常にシンプルな攻撃を行っきます。
基本的な攻撃は主に3つ。
✓ボランチの選手からサイドに大きく開いたSHへのサイドチェンジをして、SHの選手が相手のSBと勝負(SHの個人技を活かす)
✓SBからFWの選手へロングボールを供給し、こぼれ球をSHが拾ってFW&SH&ボランチ(あるいはSB)の選手とのコンビネーションで突破(各選手のプレー強度を活かす)
✓SBから開いた位置にいるSHの選手へとパスが供給され、相手のチャンネルへSBやボランチがランニングして侵入する(SBのインナーラップを活かす)
基本的な考え方としては、SHの選手がサイドに大きく開いたポジショニングをすることで相手のSBをサイドに引っ張り出してCB~SB間(チャンネル)を広げたり、SBを孤立させることで高い突破力を持つSHの能力を活かそうということでしょう。
一方で433を採用すると少し様相が変わってきます。
相手陣地のペナルティエリアの角を占領するために旋回と呼ばれる動きをしてきます。
✓インサイドハーフ(IH)の選手が大外に流れる動きをすることで、相手のボランチを引っ張り出し、そのエリアをウイングの選手が使う。
✓大外に流れる動きをするインサイドハーフの選手をシンプルに使う
シンプルにハーフスペースにいるインサイドハーフの選手へとボールを供給し、それに呼応するように裏へ抜けるWGを使うパターンもあります。
✓SBの選手がドリブルで相手選手を抜いてインサイドハーフの選手にパス
✓SBドリブルを警戒して縦方向へと相手選手の意識が向くと、SBからアンカーへとボールが供給され、浮いたアンカーからインサイドハーフの選手へとパス
442でも433でもドリブルもパスも上手い両SBが攻撃の起点となることが非常に多いので注意が必要です。
今年の大宮アルディージャのサッカー
今季の大宮アルディージャの目指すところは「相手の動きに応じてプレーを変えられるチーム」でしょう。
昨シーズンまでに高い位置からのプレッシングとショートカウンターの形を構築することができた一方で、ボールを持たされると困ってしまう試合が多々ありました。
そのため、今シーズンは昨シーズンの強みをそのままにボールを持っても有利に試合を進められるチームを目指しています。
以下はFootballistaのインタビューから引用(リンク)
「(昨シーズン志向していた前線からの積極的なプレッシングは今シーズンも継続していくお考えでしょうか?)そうですね。それは意識してやりたいと思っています。」
「今までは後ろからゲームを作っていく部分というのが多くありませんでしたが、守備から攻撃へ切り替わった局面で、相手の陣形が整っているか整っていないか的確に状況を判断したうえで、ボールを運ぶということがいかにできるかというところは見てもらいたい」
大宮公式が掲載しているほぼ日刊アルディージャでもこのようなキーワードが出てきています。
「GKを絡めたビルドアップ」
「チームとしてボール保持を高めていくトレーニング」
「昨シーズンに取り組んだ走力・縦への意識を持った躍動感のあるサッカーに加え、ボールを保持することもゲームモデルの一つに取り入れる意識」
そのようなチームを作るために、トップ・シャドー・CBの補強が多かったと思います。
CBの選手に求められているのは「ボール奪取能力・ボールの配給力(ミドルレンジのパスの精度)」でしょう。
シャドーに関しては「豊富なスタミナ・ランニングの質」が前提にあり、それに加えてドリブルや狭いエリアでボールを受けられる上手さなど個々の選手の特徴が上乗せされています。
トップの選手に関しては「ランニングの質・ポジショニング・ボールをワンタッチで落とす上手さ」が求められているでしょう。昨シーズンのような力強さはあまり求められてはいません。
練習試合で442と3421を併用しているように相手のやり方に応じてフォーメーション(噛み合わせ)を自在に変更できるようになるのも一つの目標でしょう。
この辺りは昨シーズンとは変化はありませんが、昨シーズンよりもより完成度の高い442を披露してくれるということでしょう。
観戦時に注意したいポイント
✓ナシオナルの高いプレー強度に対して早い時間帯でアジャストできるか
✓ナシオナルのカウンターに対する予防は出来ているのか
✓ポゼッションと速攻の使い分け
✓ボールを持っている味方に対して複数の選択肢を提供できているのか
✓ナシオナルの選手が動いたスペースに3トップの選手が入り込んでいるか
ナシオナルの誇る高いプレー強度はおそらくJリーグで経験することは出来ないと思います。コパアメリカでも代表選手がアジャストするのに苦労していたのが記憶に残ってらっしゃる方もいるのではないでしょうか。
試合開始直後から激しいプレッシングを実行してくる可能性が高いですから、できるだけ早い時間に相手のプレーにアジャストしなければすぐに勝敗が決まってしまう可能性があります。
アジャストさえしてしまえばナシオナルの選手は背後のスペース管理が苦手ですから、最終ラインの選手がナシオナルの選手を引き付けてあげればシャドーやトップの選手が自由にプレーすることが出来るのではないでしょうか。
ナシオナルのような高いプレー強度と強力なカウンターを持つチームはポゼッションを志向するチームには天敵です。そのため、攻めながらも相手のカウンターの起点となるような選手(オカンポ選手やパブロガルシア選手)を抑えておく必要があるでしょう。
1vs1の状況では不利が予想されますから、なるべく1vs2の状況を作ってから対応したいところです。
大宮のサッカーを見るポイントとしては、ビルドアップと速攻の使い分けでしょう。
時間帯やスコア、相手の配置などを基に効果的にプレーを選択できているかは重要なポイントになると思います。
ボール奪取時に相手の陣形が整っていれば改めてビルドアップしながら攻撃すればよいですし、相手の陣地に相手選手が少ないようならばカウンターで攻め切れば良いでしょう。
あるいは勝っている状況で無理に素早く攻める必要はないのでボールを持っていればいいわけです。
その辺りのゲームコントロールやプレーの判断は注目してみる必要があるでしょう。
ボールを持って攻める際には、味方に対して複数の選択肢を提供できているのかという部分は重要でしょう。
特に、背後へのランニングやレーン移動(横方向への移動)を含めたスペースメイキングやそれに伴って発生する前線から降りる動きや裏への抜け出しが連動しているのかというのはポイントとなると思います。
ボールを持った選手が困っているシーンが多くないか(1vs1以外の状況で無理にドリブルを仕掛けていたり、ボールを持っているときに味方を探していないか)、プレスを掛けにきたナシオナルの選手の背中側に大宮の選手がポジショニングできているかという部分をチェックしてみると面白いかもしれません。
予想スタメン
ナシオナルは多くの試合で試合開始直後は442を採用していることが多いです。
442との噛み合わせを考えると、大宮は3421を採用してくるでしょう。
練習試合のメンバーを踏まえると今のところのファーストチョイスはこのようなところではないでしょうか。
右HV・ボランチ・シャドーの人選については当日になってみないと全く予想が出来ません。
また、黒川が練習試合に出場していなかったり、イッペイが練習試合後に足首に氷を当てている映像が公式インスタにアップされていたりなど不透明なところも多いです。
ルーキーの高田くんの状態が非常に良いという情報もあるので、スタメン出場は難しくても途中出場の可能性は十分あり得るのではないでしょうか。
※追記
✈️Estos son los 18 jugadores convocados para viajar a Japón para participar de la Saitama City Cup. #NacionalSiempre #SomosNosotros pic.twitter.com/Fv1m2Fa3TX
— Nacional (@Nacional) 2020年2月3日
ナシオナル側からも来日メンバーが発表されました。
新たに2番CBマティアス・ラボルダ、21番CBグスマン・コルホ、11番MFゴンサロ・カストロが選外になっています。
2トップはカストロの代わりにフェルナンデスが入ると思いますが、CBのコンビはよめません...。
全体的に前線は主力の選手が数多く来日する一方で、最終ラインには若手選手が出場する可能性が高いのかもしれないです。
まとめ
✓ナシオナルは多くの主力組が来日
✓ナシオナルは442と433を使い分ける
✓ナシオナルは非常に高いプレー強度が特徴
✓ナシオナルの攻撃においてSBが担う役割は大きい
✓大宮はプレッシングに加えてビルドアップを強化している
✓素早い攻撃とボールを動かす攻撃の使い分け
✓大宮は全てのポジションで高いスタメン争いが繰り広げられている
✓ナシオナルの苦手な背後のスペース管理を利用できると大宮はチャンス
✓南米のチームとの対戦を楽しもう
では。