Omiya Park Life

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by 大宮戦術談議会

新助っ人外国人選手ネルミン・ハスキッチの実力は?

 

 

1.新外国人選手加入の報道

 

セルビアリーグ2018/19シーズンの得点王であるFWネルミン・ハスキッチの大宮アルディージャへの移籍がセルビアのメディアで報道されています。

fkradnickinis.rs


更に情報を得るために所属先クラブ(Radnicki Nis)のホームページを覗いてみたところ、既に大宮移籍が発表されていました。

東欧サッカーの情報通である長束氏のツイートを読む限り、移籍金は100万ユーロ(1億2000万円程度)とのことですので、今年の冬の大宮アルディージャの目玉補強と言えるでしょう。
夏の市場でPAOKギリシャリーグ現在1位)やペルセポリスFC(イランの強豪クラブ:16/17,17/18シーズンのACLで準優勝)からもオファーが届くレベルの選手ですので、かなりレベルの高い選手であることが推察されます。


大宮アルディージャ公式からのリリースはまだですが、新助っ人外国人選手であるネルミン・ハスキッチについて話していきたいと思います。 

2.経歴

ボスニアヘルツェゴビナ国籍の30歳(1989年4月27日生まれ)のフォワードです。

2008年にボスニアヘルツェゴビナリーグ2部のクラブでキャリアをスタートし、2年後の2010/2011年シーズンにトップリーグで28試合9ゴールを挙げています。

その後、セルビアポーランドスロバキアなど東欧諸国のクラブを転々とし、2018年の夏にセルビアのRadnicki Nisに加入します。

加入初年度の2018/19年レギュラーシーズンに34試合で24得点11アシストの記録を残し、リーグ得点王とベストイレブンに選出されます。チームはセルビアリーグで惜しくも2位に終わりましたが、翌年のEL予備予選の出場権を獲得しています(予備予選1回戦で敗退)。


今シーズンはセルビアリーグでこれまで18試合7得点2アシストを記録しており、チームは10勝2分8敗で7位につけています。

3.プレースタイル

2018/19シーズンのフルマッチ映像を三試合ほど確認しました。

主戦場は1列目と1.5列目(トップ下)になると思います。サイドではなく中央〜ハーフスペースでのプレーが得意な選手ですね。


所属先のRadnicki Nisでは4231(攻撃)⇔451(守備)の1トップや442(攻守)の2トップの一員として起用されていました。

185㎝という高身長ですが肉弾戦を好むようなプレースタイルではありません。

高身長な選手ですが、ロビンやフアンマとは異なるタイプのアタッカーです。日本人選手ならば佐藤寿人に近いタイプかもしれません。
1.5列目で起用された際にはオフザボールの動き(ボールを持っていないときの動き)で自身のプレーエリア(スペース)を生み出してライン間(相手DFとMFの間)でボールを受ける動きや相手のサイドハーフボランチの間に顔を出してボールを受ける動きを好んでいました。

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1.5列目(トップ下)として起用されたとき

1列目で起用された際には相手DFとロングボールの競り合いを行うこともありましたが、多くのシーンでは積極的な裏へのランニングを活かして相手DFの背後でボールを受けたり、味方にプレーエリア(スペース)を提供する動きを繰り返していました。

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トップとして起用されたとき

共通しているのは、オフザボールの動き(ボールを持っていないときの動き)やランニングによってスペースを生み出すことが上手なことです。
そして、相手選手のマークを外しつつ浮いた場所でパスを受けることが非常に上手です。
少し難しい表現をしますが、「ビルドアップの出口としてライン間や相手選手間でボールを受ける動き繰り返すが、アタッキングサードでは崩しに参加せずに一時的に試合から存在を消すことでいつの間にかゴール前でフリーになっている選手」ですね。
相手のマークを外す動きが上手いため、PA内でフリーになった状態でのヘディングシュートやワンタッチでのシュートとても多い選手だと思います。相手DFをねじ伏せてゴールするようなシーンは多くはありません。
また、わざとゴール前に走りこまずにPKマーク辺りでフリーになっているシーンも見られました。とても頭の良い選手なのだと推察できます。

スペースメイクとワンタッチの技術に優れた選手なのでボール保持でもカウンターでもどちらでも活躍できる選手ですが、フィジカルを活かしたプレースタイルではないので、チームにしっかりと規律が落とし込まれていなければ(オーガナイズされていなければ)活躍することは難しい選手でしょう。

 

守備に関してはFWに求められる最低限の守備タスクをしっかりとこなす選手だと思います。
パスコースを切りながら相手のDFに寄せること、チームとしてプレッシングを実行する際に相手を捕まえること、ボール喪失時に相手に寄せること、プレスバックなど基本的な動作をこなしていました。
そもそもRadnicki Nisでは大した守備タスクを割り振られていなかったのかもしれません。

4.大宮での起用法は?

大宮が来季も3421を継続するならば、シャドーがベストのポジションだと思います。
もちろん1トップとして起用することも出来るとは思いますが、彼が一番活きるのは彼の代わりに最前線で競り合ってくれる選手(相手DFを押し込んでくれる)選手と組んでいるときだと思います。

攻撃面において、味方にスペースを提供すること・自身がライン間(MF-DF間)でボールを受けること・浮いた位置でボールを受けることを好むプレースタイルは3421のシャドーに求められる要件を満たしていると思います。
一方で、守備面では少々不安が残ります。
というのも大宮のシャドーは多くの守備タスクを割り振られており、体力的な消費が非常に多いポジションなのでそのようなタスクを全て実行できるかは未知数だと思います。

ネルミン・ハスキッチ選手をシャドーとして起用したいならば、325(攻撃)⇔541(守備)の形を325(攻撃)⇔442(守備)のような可変システムを採用する必要性が出てくると思います。

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大宮の攻撃時の布陣(325)

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大宮の守備時の新布陣(442)(仮)

あるいは昨シーズン途中に志向していた3142(攻撃時)⇔532(守備)を採用して2トップとして起用するのがいいかもしれません。


ハスキッチの加入によって、ロビンやフアンマの退団が脳裏をよぎった方も多いと思いますが、その可能性は低いと思います。
少なくとも二名とも退団するということは無いのではないでしょうか?

彼の加入によって不利益を生じるのはバブンスキーと富山でしょう。
バブンスキーは似たようなプレースタイルの黒川が加入し、同じくボールを運ぶことが出来る奥抜が昨シーズンに既にスタメンを獲得しています。
富山に関しては守備面でハスキッチよりも大きな働きをしてくれる一方で、攻撃面では彼と似たような動き(ライン間でボールを受けること、裏へ走ること)をハスキッチが高いレベルで実行してくれます。


いずれにせよ、ハスキッチの加入によって課題となっていたシャドーの選手層の問題やボールを保持しながら攻撃することができないという問題は解決すると思います。

詳しくは、メキシコさんの今シーズン総括と大宮アルディージャのチームビルディングの考察記事をご覧ください。

omiyadangikai.hatenablog.com

記事中で指摘されている、目指すチームコンセプトに基づいた補強という面で今回のハスキッチの獲得はそれを裏付ける証拠となっているのではないでしょうか。
天皇杯で決勝に進出しているヴィッセル神戸やJ1王者の横浜F・マリノスも同様の補強方針でチームにフィットしそうな選手を効率よく獲得しています。

 

 

大宮公式からのリリースが待ち遠しいですね。

 

では。