高木監督は大宮アルディージャで夢を叶えたいのかもしれない。
1.2019シーズンについて
ご安全に。
かわらばんばっかりになってしまい、ブログはエラい久々になってしまいました。
さて、シーズン総括といってもTwitter見てるとほぼほぼ語られてますし、筆者が今更どうこういってもなって気がしてます。
その中でも整理されてるのは、おきくちゃんの一連のツイートかでしょう。これみりゃ今シーズンこんな感じだったと大体分かる。
色んな人が言ってるけど、チームが中長期での強化目標を立てて万年残留争い(&エレベータークラブ化)からなんとか抜け出そうとしてる初年度で何故ここまで荒れるのかが分からない。
— ちくきー (@Soka_ardija0331) 2019年12月2日
そもそも国内で有望な監督な一人である高木さんを招聘して初年度はJ2で3位(最終節まで自動昇格争い)なわけだよね。
近年ならば渋谷政権とベルデニック政権のようにトータルフットボール的概念を表現したチームがたしかに大宮にはあったんすよ。それを我々は一度暗転しかけると捨て続けてきたんです。そんなものを高木監督のもとで再び構築していこうとしているのになぜそれが分からないんだ。
— ちくきー (@Soka_ardija0331) 2019年12月2日
ってことで、記事を終わらせても良いんですが(笑)
結局の所、今シーズンを箇条書きで纏めると
- プレッシングと堅守というベースとなる部分は仕込めた。
- けど怪我人も多く、ビルドアップからの攻撃については深く踏み込めなかった。(やろうとはしてたし、序盤出来た時もある)
- 結果的に、ショートカウンターとロングボールが最大の強みとなり、重要な残り5試合+プレーオフでそれが顕著に出た。
- 短期目標(J2優勝&昇格)は達成出来ず。プレーオフでの昇格も失敗。
という事になろうかと思います。点数をつけるなら100点ではないでしょう、昇格出来なかったですし。
ただ、中長期的な観点からみれば70点くらいはつけれると思います。チームに土台が出来たことは、多くの人には分かっているはずです。
筆者の2018年シーズンの振り返り記事で、2019年への課題は以下と記していました。
- チームの長期的なプランとその明確化
- それに合ったコンセプトと戦術を持った、強烈な監督
- そして、それを継続させるクラブとサポーターの覚悟
シーズン終了後の社長のお気持ち文章の中にも出てきた通り、「中長期的な視点」を持って高木監督を招聘したとあります。
これまでの場当たり的な監督人事ではダメだという事に気づいたのか、少なくともチームとして、長い目でチームを作り上げようとしている意思は感じられます。
J1では横浜FMが優勝しましたが、近年はそれ以外でも継続性があるチームが上位にいる傾向が強まってきました。ヨーロッパなんかは完全にその傾向。
南野選手のザルツブルク⇒リバプールの移籍からも見て取れるように、選手の補強もチームのコンセプトに合わせながら、なるべくミスマッチが無いように同系統のチームから補強する。
みたな事が普通に起きています。横浜FMの補強の仕方も、チームのコンセプトが明確になっているからこそ出来ているものです(尚、シティグループ)。
そういう意味で、大宮も継続性を意識してるんだなぁと割とポジティブに考えていましたが、批判的な人がいる事には若干驚きました。
でもまぁ、考えてみると。
「中長期的な視点で高木監督」だったという事は、高木監督がやりたいサッカーとクラブのビジョンが一致しているという事でもあります。
そう考えると、今シーズンの戦い方とこれまで(特に長崎時代)の高木監督のサッカーを見る限りでは、本当に一致してんのか?ということが言いたくなるのも分からんでもないです。
というか、考えれば考える程疑念が大きくなってきたりする筆者であります。つか、大宮がやりたいサッカーってそもそも何?
という事で、今回はその辺を整理しながら、出来るだけ未来に向けた話をしていきたいと思います。
2.そもそも大宮の目指す所
大宮が常日頃言っているのは、所謂オランダサッカーってやつです。
ただ、オランダサッカーが非常に曖昧な表現、トータルフットボールといってもそれ自体もなんか曖昧。
イマイチ分かりにくいですが、要はクラブが言っている
攻守にイニシアチブを取る。
という事なのだろうと思うので、ここで定義付けしときます。
過去トップチームでは、そうした戦い方が出来ていた方が少ない印象があるかと思いますが、一方で育成組織ではしっかりとした考え方のもとチームを作り上げ、現在もそれが続いています。
因みに、大宮アルディージャジュニア著作のサッカードリルも読んでみました。こちらも育成組織の考え方が分かるかなと思います。
昨今では「ゲームモデル」なるものが取り沙汰されていますが、大宮アルディージャはクラブ創立の背景や大宮という街、そして故ピムファーベークから与えられた影響をベースにして、「つながる」をキーワードにしたゲームモデルが存在しています。(と、勝手に筆者は思ってます)
つながる・・・というと、パスサッカー的なイメージが強いですし、大宮というと良くも悪くもそのイメージがありますが、どちらかというと記事の中にもある
献身的にみんなでつながってプレーするスタイル
という意味合いの方が濃いんじゃないかなと思います。
記事や文献だけでは当然細かい点までは見えてこないですが、ざっくり大宮アルディージャというクラブのモデル、4局面の主原則はこんな所なんじゃないでしょうか。
これに近い戦い方をしたのが、恐らく渋谷体制での約3年間だったんじゃないかなと思います。
今思い返すと、特に15年シーズンはJ2だったこともあって、ユースもトップチームも似た形のサッカーが出来ていたんじゃないかと思います。
15年の大宮で左サイドの菱形形成の際にサイドに張る役と頂点に入る役の2つをこなしていたのが大きいですね。サイドに張った時は質的優位での突破。頂点に入った時はCBSB間への裏抜けとエリア内での仕事と、ポジションに与えられたタスクをやり遂げてました。なので今日のプレーも納得だなと pic.twitter.com/RCtRel70Ng
— 羊 (@GP_02A) 2018年8月4日
上記は15年シーズンの大宮について語られていますが、現在のユースも同じようにポジションとスペースを意識した攻撃と綺麗なゾーンディフェンスが健在です。
因みにユースの試合はYouTubeでも見れるので、年末年始暇な人は是非見て下さい。
【公式】名古屋U-18 vs 大宮U18 2019Jユースカップ準決勝 ライブ配信 2019/11/10
【公式】ライト・トゥ・ドリーム(ガーナ)vs 大宮アルディージャU18(日本)-Right to Dream/GHA vs OMIYA ARDIJA U18/JPN
という事で、結局のところ何が言いたいかっていうと、大宮アルディージャというクラブは、地域や文化、歴史を踏まえたゲームモデルが実はあるということ。
その証拠にユース年代は今も継続して、過去でいうと渋谷体制でそれが具現化していたという事が言いたい訳です。
ただ、忘れちゃならんのが当時のトップチームには家長選手や泉澤選手がいたという事。
その翌シーズンにその二人が抜けた事で最悪の結末を迎える訳ですが、今考えると、何よりその代役が入らなかった(大前選手や瀬川選手は良い選手だけどタイプが違う)という所がポイントだったと思います。特に仁の代役。
そういう意味では当時の強化部はまだまだ未熟だったよなぁと思いつつ、J1で考えたときに莫大な予算を持っている訳ではない大宮が、仮に今後上手く行った場合。
はて、それを維持する為に、どうやってゲームモデルに見合った選手を見つけ出してくるかというと…。
もう答えは決まっているのですが、それは後述したいと思います。
3.高木監督の目指しているところ
一方、ぶーやんです。
これについては、アウェイ柏戦でもちょっと書きましたんでサクッと書きます。
敵の戦い方を踏まえながら、こちらの戦い方を決められるのが最大の特徴の高木監督ですが、ただやはり長崎時代のイメージからかハイプレスショートカウンターの印象も強い監督でもあります。
一方、彼の理想は相手を敵陣に押し込みたいということ。そう本人が語っている以上、ハイプレスはその為のものであろうかと思います。
とにかく長くボールを保持したいというのが、彼の究極の理想なんだろうと思います(どんな監督もそうかもしれませんが)。
Guardiola's Bayern Munich high pressing
FC Bayern Tiki Taka ● Guardiola System ●
いやぁ、でもこんなん無理やろ(笑)選手の質も違うしやな。とか、動画見ながら思ってた筆者ですが、でも待てよと。
このサッカーと大宮の目指すところって、結局同じなんじゃないの?と。
まぁペップバイエルン(というかペップ)のサッカーは完全な理想像だから置いとくとして、その方向性。
そもそもトータルフットボールの発展形が今のポジショナルプレー。その先駆者であるペップみたいに、相手を閉じ込めるサッカーをしたいという高木監督。
オランダサッカーをベースに攻守でイニシアチブを取りたいっていうのが大宮。当然、配置とか意識したサッカーになっている。
おお・・・合致しとるやないか。
まずは高木監督とクラブの考え方、進んでいきたい方向について話をさせていただき、高木監督からも考えているコンセプト、そしてサッカースタイルのお話を聞くことができました。我々が描いている姿、目指している形が近いものであり、一緒に手を取って取り組んでいけば強い大宮、魅力ある大宮が作れるのではないか。
こうやって紐解いていくと、「中長期的な視点」という所にも説得力が生まれてくるかなと思います。
じゃあなんだったんだ、シーズン終盤の古代イングランドサッカーは・・・と思わんでもないですが、高木監督の面白い所はここで理想に走らずに、しっかりと現実を見ている所だと思います。
上が切れてた pic.twitter.com/Aij8B4ZMym
— Zdenko (@PO6qmzXGZLZ1QCi) 2019年12月22日
上図は、Zdenko氏の得点傾向分析(これは得点のみ。記事楽しみにしてる。)ですが、確かにシーズン序盤はカウンターによる得点ってのはそんなになくて、大前選手を中心にしながらボールを保持して攻撃する傾向が強かったと思います。
この時のポゼッションは、ダラダラとボールを回してというものではなかったと思いますが、特にCB、WB、シャドーを中心としたサイドからの攻撃というのは序盤では光っていましたし、可能性も感じてました。
また、シーズン序盤でトリセツ書いたときにも、トランジションについては全く書けなかったところに、この結果の信ぴょう性が表れていると思います。
相手の対策や怪我人の多さ等で難しい状況に立たされ、徐々にトランジションの部分で勝負する傾向となり、最後はロングボール戦術となっていく訳ですが、監督はその時々の状況を見ながら、目指す方向の範囲内で戦術を変えていった様に思います。
少なくとも高木監督自身が、昇格のために真逆のサッカー(引きこもりカウンターみたいな)を取ったことはなかったと思います。結果的に、メンタルの部分で行けなかったという事はありましたが。
さらにブレなかったのは守備の部分。これが出来ない選手が徐々に序列を落としていくことになったと思います。
圧倒的な質を有した選手、それこそメッシみたいなのがいれば話が違いますが、現代サッカーにおいて前線の選手も守備タスクを課される時代。
悪い言い方をすれば、大宮クラスのチームではその部分が必ず求められる訳で、J2の中でもそうですし、J1なんかいったらよりその傾向が強まると思います。
それが出来ない選手は今後も難しい。理想と現実を見極めながら、上手く序列をつけて采配を振るったんじゃないかなと思います。
誰だって攻撃の事を考えたら大前選手は使いたいと思うでしょう。実際、使ってましたし。
常に昇格が求められるこのチームに於いて、「結果」と「継続的な強化」という2つタスクを上手く両立した監督だと思います。そういう意味で、契約更新できたことは来シーズン昇格に向けて非常に意味のあるものだったと思います。
とは言え、短期的な結果を見たら昇格できなかったという事実は残る訳で、これから色々と考えなきゃいけない状況です。特に補強ですね。
高木監督の意思に沿った選手補強というのも重要なポイントの一つになろうかと思いますが、選手に関してはもう一つポイントがあると思います。
4.来シーズンのポイント
もう分かるとは思いますがユース出身の選手です。
今シーズンはユース出身の選手が活躍した年でもありました。
今シーズン初スタメンとなった #33奥抜 は1ゴール1アシストの大活躍!
ボランチでフル出場した小島幹敏は積極的にボールに絡みゲームをコントロール
9/22・東京V戦 71分 小島幹敏が中央突破からリターンに合わせてゴールに迫る
8/4・山形戦 52分 ドリブルで運んだ小島幹敏のパスから奥抜侃志がシュート
プロ初スタメンとなった #36吉永 は左のウイングバックに入り攻守に奮闘
7/13・鹿児島戦 2分 #36吉永 のパス をう受けた #15大山 がミドルシュート
育成組織で育った彼らは、ボールの受け方や立ち位置、入り込む位置が他の選手と毛色が違います。
恐らく本人たちはそういう意識でやっていないでしょうけど、ハーフスペースやニアゾーンといった現代サッカーで特に重要とされているエリアやポジション。
彼らは自然とそこにいることが出来ている様に感じます。
これは攻撃だけの話ではなく、攻撃時に良い配置(要はある特定のエリアがぽっかり空いてない、とか)になってれば、仮に奪われた後もすぐに奪回出来る、つまり良い守備にもつながります。
もちろん大型補強というのもワクワクするものがあります。筆者もそういう選手がいれば良いなと思います。
ただ、もしコンセプトにそぐわなければ、また大前選手のように不完全燃焼な結果で終わってしまう可能性もあります。
ですので、今後外から補強する際は本当に慎重に進めなければならないと思います。
一方、クラブと高木監督がやろうとしているサッカーに対して最も適合している選手は誰かといえば、それは紛れもなくユース出身の彼らのハズです。
彼らを活かせないと、クラブとしてゲームモデルを掲げている(と、筆者は思っている)意味がない。
つまるところ、いよいよこのクラブはアカデミーとトップを融合させる時が来たんじゃないかということです。
奇しくも高木監督はそういった選手を活かす事が上手い。それは今シーズン立証されています。課題となるボール保持時の攻撃についても、ユース組の選手達は教えずとも基本を理解している。
クラブがこれまで培ったノウハウと、高木監督の指導を上手く組み合わせる事が出来れば、これは本当に大宮の歴史を変えることにも繋がるんじゃないかと思います。
来シーズンは遂にあの男も帰ってきます。
【公式】ゴール動画:黒川 淳史(水戸)77分 水戸ホーリーホックvs徳島ヴォルティス 明治安田生命J2リーグ 第8節 2019/4/7
いやぁ、来シーズンもJ2とは言え、非常に楽しみなシーズンになりそうです。
5.まとめ
という事で、つらつらと書いてきてしまったので、これまでの内容を簡単に箇条書きで纏めます。要は、
- 今シーズン、土台は仕込んだけどもボール保持があと少し足りない。
- 高木監督はトランジションに特化(リバプール的な)ではなく、どちらかというとボール保持をしたい。その点で大宮の思想と合致した。
- トランジションに特化したように見えたのは、そうせざるを得なかったからという意味合いが強いのでは。
- しかし、怪我人等の影響で結局その部分が足りなかった。ボール保持時の攻撃(と配置)が来シーズンの大きな課題。
- 一方、今年は育成出身の選手が活躍、育成組織のこれまでの積み重ねが花開くこととなった。
- こうした選手と、クラブが培ってきたノウハウ、高木監督の指導を組み合わせれば、間違いなく強いチームになる。来シーズンのポイントはこれが出来るかどうか。
- 要は、来年も楽しみですな!
みたいな感じでしょうか。
もうちょっと暗めにエモく書こうかなと思ったんですが、やめました(笑)
Twitterや掲示板では色々という人はいますけど、筆者としてはそんなネガティブになる必要はないんじゃないかなと思ってます。
寧ろ、色々考えると割と楽しみしかないというかね。色々ご批判もあろうかと思いますが、あまりあーだこーだ言ってもね。結局、最後は置いていかれるだけだと思うので。
さて、おきくが大宮戦術談議会のサイトを作ってくれました。今後はこっちで色々と書いていこうと思いますが、割かし好評頂いてます「かわらばん」については継続していきます!
一応Twitterでも流しますし、とは言えTwitterだと埋もれてしまうので、保管するためにも談議会サイトにも上げていくと思います(形式は検討中)。
筆者のMatch dayについては、閉鎖も考えましたが逆に大宮以外のことについて書く場にしようかなと思ってます。ザスパについて書きたいですし。ので、冬休み中に改良します。
とりあえず年内メキシコさんが書く記事はこれが最後です。選手、スタッフ、そしてサポーターの皆さん1年間お疲れさまでした。
また来年よろしくお願いいたします。そして、よいお年を!
ご安全に!!
以上